知っておくべきMQL5ウィザードのテクニック(第78回):ゲーター&A/Dオシレーター戦略による市場耐性の強化
はじめに
前回の記事では、ゲーターオシレーターとA/Dオシレーターの組み合わせから生まれる5つのシグナルパターンを紹介しました。本記事では、この10個のセットのうち残りの5つを検討します。私たちは各インジケーターの組み合わせについて10個のシグナルパターンを見てきており、この形式を維持していきます。前回の記事で、GBP/JPYペアの30分足を対象におこなったテストの結果、Pattern_0、Pattern_3、Pattern_4はフォワードウォークで機能するのが難しいことが示されました。しかし、教師あり学習による改善点を選ぶ前に、まずPattern_5からPattern_9までの検証とテストを完了させましょう。
偽のブレイクアウト/トレンドトラップ(A/D確認なしのゲーターシグナル)(Pattern_5)
Pattern_5は、トレンドトラップ(実現しないブレイクアウト)に基づいています。強気シナリオでは、ブルトラップが存在します。ゲーターのすべての「覚醒」が強気トレンドにつながるわけではなく、騙しのケースが該当します。一般的なブルトラップは、ゲーターオシレーターがトレンドシグナルを示し始めたときに発生することがあります。たとえば、複数バーにわたって赤のヒストグラムが続いた後に、1つのヒストグラムが緑に反転して上昇トレンドを示唆するが、A/Dラインがそれに応じて上昇しない場合です。このブルトラップでは、価格がレジスタンスを一時的に突破することがあり、ゲーターオシレーターはその初動を顎/歯/唇がわずかに開いた状態として反映します。それにもかかわらず、A/Dは横ばいのまま、あるいは下落することがあり、実際の蓄積が不足していることを示します。
この後、価格が「トラップ」後に下落せず、むしろゲーターオシレーターの口が開いたままA/Dが上昇してブレイクアウトゾーンを素早く取り戻す場合、このトラップは振り落とし(損切りの誘発)であった可能性があります。価格が両方のオシレーターによる二重の確認を伴って再び上昇する場合、これが強気のトリガーとなります。これは、「ブルトラップ」がショートポジションを捕らえ、本物のブレイクアウトのロケット燃料を提供する状況として考えることができます。このパターンは、MQL5では以下のように実装されます。
//+------------------------------------------------------------------+ //| Check for Pattern 5. | //+------------------------------------------------------------------+ bool CSignalGator_AD::IsPattern_5(ENUM_POSITION_TYPE T) { if ( clrRed == Color_UP(m_gator, X() + 1) && clrGreen == Color_LO(m_gator, X() + 1) && clrRed == Color_UP(m_gator, X()) && clrGreen == Color_LO(m_gator, X()) ) { if ( T == POSITION_TYPE_BUY && Close(X()) > High(X() + 1) && Close(X()) > High(X() + 2) && AD(X()) >= AD_Max(X() + 1, 2) ) { return(true); } else if ( T == POSITION_TYPE_SELL && Close(X()) < Low(X() + 1) && Close(X()) < Low(X() + 2) && AD(X()) <= AD_Min(X() + 1, 2) ) { return(true); } } return(false); }
弱気シナリオも同様で、ゲーターが弱気のシグナルを出しても、A/Dによる出来高確認は伴いません。このような場合、価格は一時的にサポートを下抜けることがありますが、ゲーターは下落の兆しを示します。A/Dが分配不足のため下落せず、むしろわずかに上昇する場合、この下落は不安定な状態にあることを意味します。いわゆるスマートマネー(大口投資家)は大きく売っておらず、むしろ押し目買いをしている可能性があります。その間、A/Dの確認がないことは、現在の下降トレンドが失敗する可能性を示唆しています。価格は反発して再び上昇し、一部のトレーダーを不意打ちにし、その結果、下降トレンドは実現しないと考えたトレーダーを捕らえることになります。しかし、もし価格が前述のコードで示された通り再び下落し、A/Dもそれに追随する場合、弱気ポジションが成立します。このパターンのテストでは、以下のレポートが得られ、概ねフォワードウォークでも利益を出すことができました。ただし、2025年後半の6か月間においては、資産曲線はほぼ横ばいとなりました。

Pattern_5の強みは、ゲーターと組み合わせた出来高フィルタの実装方法にあります。ゲーターは価格の動きに反応しますが、その動きが実体を伴っているかどうかを示すのはA/Dです。多くのテクニカルトレーダーは、すべてのブレイクアウトやトレンドクロスオーバーに飛びついてしまいがちですが、A/Dの整合性を確認することで、多くの負け取引を避けることができます。実務上、この組み合わせを使用すると多くのシグナルを見送ることになるのが普通ですが、私たちの場合は、かなり多くの取引を実際に仕掛けることができました。トラップを見抜くことで、反対方向の取引、たとえばブレイクアウトの逆張りも可能になります。ブレイクアウト時に典型的なA/Dの出来高ダイバージェンス、つまり価格が高値を更新してもA/Dが上昇しない状況が見られた場合、タイトストップを設定して逆張りポジションを検討することもできます。
一方で、弱点は、実際のブレイクアウトがごくわずかな出来高増加で始まった場合にA/Dが初動で遅れることがある点です。非常に厳格なトレーダーは、この出来高確認の遅れにより正当な取引を逃してしまう可能性があります。偽のブレイクアウトと、まだ出来高が付いていない本物のブレイクアウトとの区別は常に微妙です。さらに、A/D自体も偽のシグナルを出す場合があります。たとえば、価格が変わらないローソク足で1回だけ大きな出来高スパイクが発生すると、A/Dがトレンドを示さないのにジャンプすることがあります。より重要なのは、市場の状況です。中央銀行の介入や予想外の地政学的な決定などの特定イベントでは、記録された出来高が低くても価格が激しく動き、流動性が枯渇することでそのまま変動を続けることがあります。この場合、A/Dは通常通りの確認をおこなわないかもしれませんが、こうした動きの逆側に立ちたくはありません。したがって、A/Dによる即時確認がないすべてのゲーターシグナルを硬直的に無視することは、例外的なケースでは、失敗する可能性があります。もうひとつの小さな弱点は、ティックデータへの依存です。特にFXでは、ブローカーのティックデータに誤差がある場合、A/Dが誤解を招く可能性があります。
実務上、戦略において出来高確認をルールとして組み込むことは非常に重要です。潜在的なトラップを特定した場合、トレードを見送るか、慣れていれば、ブレイクアウトが失敗したことを確認して逆方向に仕掛けることができます。たとえば価格が範囲内に戻った場合などです。このパターン(トラップ)ではタイトストップを使用することで、もし間違っていて、動きが本物でただ出来高が遅れていた場合でも、市場がすぐにその真偽を示してくれます。Pattern_5は、主要なチャートレベル、たとえば重要な高値・安値、過去の価格レベル、フィボナッチレベル周辺で特に重要です。スマートマネーは、ストップを誘発させるために「偽のブレイク」を仕掛け、その後反転することがあります。A/Dを観察することで、大口のプレイヤーが本当に追随しているのか、それとも単に流動性を試しているだけなのかを把握できます。最後に、ニュースフィルタを補助的に活用することも有効です。予定されたニュースイベントの前後では出来高の値が乱高下するため、トレーダーはエントリーを見送るか、値動きが落ち着くのを待つことができます。
レンジにおける蓄積/分配(ゲーター休眠+A/Dのブレイクアウト予兆)(Pattern_6)
Pattern_6の強気シグナルは、蓄積局面のレンジ内で定義されます。市場が変動の少ない状態で振り子のように動き、アリゲーターラインが頻繁に交差する場合、ゲーターオシレーターはヒストグラムが主に赤で表示されることが多くなります。これは明確なトレンドがないため、ゲーターが休んでいる状態を示しています。このような状況では、価格はほぼ水平なチャネル内で上下に揺れ動き、ゲーターはシグナルを出さなくても、A/Dは水面下で強気バイアスが形成されつつあることを示すことがあります。この価格レンジ内で、A/Dラインがゆっくりと着実に上昇している場合、価格がブレイクアウトしていなくても、上昇方向への出来高が下落方向より多く流入していることを意味します。この蓄積フェーズは、強気のポジションを取ろうとする大口投資家の存在を示す重要な手がかりになることがあります。強いプレイヤーは、価格を大きく動かさずに静かなレンジ内で買いを進めている可能性があります。
ゲーターが横這いでトレンドがなくても、A/Dが上昇トレンドを示している場合、次の大きな動きは強気のブレイクアウトになる可能性が高いと予想されます。価格レンジは、潜在的な買い圧力が解放されることで上方向に解消される可能性があります。トレーダーは、偽の動きを避けるためにブレイクアウトが実際に発生するまで待つことが多いですが、その際にはロングに傾いたバイアスを持つか、価格レンジのサポート付近で既存のロングポジションを積み増すことも考えられます。このパターンは、MQL5では以下のように実装されます。
//+------------------------------------------------------------------+ //| Check for Pattern 6. | //+------------------------------------------------------------------+ bool CSignalGator_AD::IsPattern_6(ENUM_POSITION_TYPE T) { if ( clrRed == Color_UP(m_gator, X() + 1) && clrRed == Color_LO(m_gator, X() + 1) && clrRed == Color_UP(m_gator, X()) && clrGreen == Color_LO(m_gator, X()) ) { if ( T == POSITION_TYPE_BUY && Close(X()) > High(X() + 1) && Close(X()) > High(X() + 2) && AD(X()) >= AD_Max(X() + 1, 2) ) { return(true); } else if ( T == POSITION_TYPE_SELL && Close(X()) < Low(X() + 1) && Close(X()) < Low(X() + 2) && AD(X()) <= AD_Min(X() + 1, 2) ) { return(true); } } return(false); }
弱気のレンジ内分配は、上昇トレンド後の横ばいの保ち合いや、広いレンジ相場内で発生します。価格がレンジ内で推移している間にA/Dが徐々に下降している場合、これは分配を示しています。大口投資家は静かにラリーで売りを出している可能性があり、下落局面での出来高が上昇局面よりも大きくなっている場合がありますが、価格自体はまだ下落を示していません。ゲーターは休眠状態を維持し、上下のバーは赤で表示され、トレンドが存在しないことを示しています。しかし、下降するA/Dは、レンジがブレイクした場合には下方向に動く可能性が高いことを警告しています。
この状況を観察しているトレーダーは、弱気方向への解消に備えることができます。たとえば、レンジ内でロングを控え、サポートブレイク時にショートを狙う戦略が考えられます。これは、背景で持続的な売り圧力が存在することの証拠があるためです。A/Dのバイアスは実際のブレイクダウンに先行して現れることがあり、トレーダーに「最も抵抗の少ない方向は下」という予兆を与えてくれます。Pattern_6のテストでは、次のレポートが生成されます。


このシグナルパターンは、フォワードウォークで利益を出すことが可能で、これまで見てきたPattern_0~Pattern_5よりも優れている可能性があります。その強みは、機関投資家の動きを読み取る手がかりを得られる点にあると言えます。価格が横ばいで推移している間も、出来高は真実を示す指標として頼りになります。レンジ内での蓄積/分配は大きな値動きに先行することが多いためです。A/Dと非トレンドのゲーターを組み合わせることで、ブレイクアウトの方向を予測する優位性を得ることができます。多くのトレーダーは、レンジをすべて同じように扱い、どちらの方向にブレイクするかを待つ傾向がありますが、Pattern_6の場合は、出来高がどちら側に傾いているかを把握することで勝率を高めることができます。
したがって、このシグナルパターンの強みは、価格レンジ中に比較的低リスクで示唆を得られる点にあります。A/Dが示す方向にポジションを積み上げることもできますし、レンジの反対端でタイトストップを設定してすぐに仕掛ける準備をすることも可能です。予想通りにブレイクアウトが発生すれば、市場に早く乗ることができます。さらに、反対方向の偽の動きを避ける助けにもなります。たとえば、蓄積の明確な証拠があるのに価格が一時的にサポートを下抜け、ゲーターのヒストグラムが下段で緑にちらついた場合でも、その下落には懐疑的になるべきです。実際、多くの場合価格は急反発します。FXでは、分散型の出来高構造であっても、ティック出来高を用いることでこのパターンは有効です。たとえば、東京市場でEUR/GBPが横ばいのレンジを形成している際に、ティックA/Dが一晩中上昇して価格が横ばいのままであれば、通常ロンドンセッションで強気の値動きが発生します。
一方で、Pattern_6の弱点としては、A/Dが徐々に動いても、極端な動きでない限り検知が難しい点があります。A/Dの小さな上昇や下降はノイズの可能性もあるため、意味のある蓄積かランダムな変動かを見極めるスキルが必要です。また、レンジは長く続く傾向があり、A/Dが上昇していてもブレイクのきっかけがなければ価格はレンジ内に留まり、場合によってはニュースの影響で出来高が逆転することもあります。レンジ序盤でA/Dが上昇しても、その後大口プレイヤーが売りに転じると「偽のバイアス」を抱く可能性があるため、常に状況を更新する必要があります。
さらに、このパターンは正確なタイミングのシグナルではないことも弱点です。ブレイクアウトの方向は示しても、いつ発生するかは分かりません。方向を正しく予測できても、レンジ内で鞭打ちのような値動きにさらされることがあります。たとえば、FXペアが何週間もレンジ内でA/Dが上昇していても、早すぎるタイミングでロングを仕掛けると、レンジ外にタイトストップを置いた場合に切られることがあります。さらに、ニュース不確実性のあるレンジでは、蓄積と分配がレンジ内の異なる部分で同時に発生し、出来高の方向性があいまいになる場合もあります。この方法では明確なバイアスを得られないことがあります。Pattern_6のチャート上での強気シグナルは、次のように現れることがあります。

隠れ出来高ダイバージェンス(ゲーターによるトレンド確認付きの隠れ強気/弱気)(Pattern_7)
Pattern_7は、その名称が示す通り、隠れ出来高ダイバージェンスに基づいています。強気の隠れダイバージェンスは、通常トレンド継続パターンとして現れます。これは上昇トレンド中の調整的な押し目で発生し、価格が前回のスイングローを下回らずに高値更新の押し目を作ることで、上昇トレンド構造が維持される場合です。この状況下で、A/Dラインは同じポイントでより低い安値を形成します。つまり、2回目の押し目では1回目よりも売り圧力(出来高)が大きかったにもかかわらず、売り手は価格を前回の安値以下に押し下げることができなかったことを意味します。これは、買い手が追加の売り圧力を吸収できたことを示すため、基礎的な強さのサインとみなされます。
要するに、市場はより強い売りの力を受けたにもかかわらず前回の安値を下回らず、下落は強い買いによって相殺されたことを示しています。このシナリオでは、ゲーターオシレーターは全体的にトレンドが依然として強気であることを反映するでしょう。たとえば押し目の間、モメンタムが低下して一部のヒストグラムが赤くなることはありますが、顎/歯/唇のバッファは、ペア間の一部ギャップが縮小しても、依然として強気の配列を保ちます。価格が高値更新の押し目から上昇し始めると、ゲーターはすぐに緑のヒストグラムに切り替わり、上昇トレンドが再開したことを確認させます。価格が高値更新の押し目を作る一方で、A/Dが安値を更新するという隠れダイバージェンスは、押し目で買い手が静かに優勢だったことを示す出来高ベースの手がかりです。このパターンは、弱気ポジションが振り落とされ、大口投資家が買いを入れているため、トレンド継続の可能性が高いロングシグナルとして機能します。このパターンは、MQL5では以下のように実装されます。
//+------------------------------------------------------------------+ //| Check for Pattern 7. | //+------------------------------------------------------------------+ bool CSignalGator_AD::IsPattern_7(ENUM_POSITION_TYPE T) { if ( clrRed == Color_UP(m_gator, X() + 1) && clrRed == Color_LO(m_gator, X() + 1) && clrGreen == Color_UP(m_gator, X()) && clrGreen == Color_LO(m_gator, X()) ) { if ( T == POSITION_TYPE_BUY && Low(X() + 2) > Low(X() + 1) && Close(X()) > Low(X() + 1) && AD(X()) >= AD_Max(X() + 1, 2) ) { return(true); } else if ( T == POSITION_TYPE_SELL && High(X() + 2) < High(X() + 1) && Close(X()) < High(X() + 1) && AD(X()) <= AD_Min(X() + 1, 2) ) { return(true); } } return(false); }
弱気の隠れダイバージェンスでは、下降トレンド中に急反騰(リリーフラリー)が発生した際に現れます。価格は前回のスイングハイを上回れず、低めの高値を形成することで、下降トレンドを維持します。しかし、A/Dはそのラリーで前回高値を更新します。これは、2回目の反発時の方が1回目よりも蓄積出来高(買い圧力)が大きかったにもかかわらず、買い手が価格を高値更新まで押し上げられなかったことを意味します。背景には売り圧力が出来高を吸収しているため、基礎的な弱さを示すサインとなります。言い換えれば、買いがある程度入っても価格回復は浅く、これは弱気シグナルです。ゲーターは下降トレンドが依然として有効であることを示し、モメンタムが一時的に変化してもヒストグラムが赤に変わるのは1本程度に留まるでしょう。
顎、歯、唇の移動平均バッファは、下降スタックを維持するか、迅速に弱気の配列に戻ります。価格が低値更新の高値から再び下落し始めると、ゲーターのヒストグラムは上下とも緑に変わり、ゲーターが再び「食べ始め」下降トレンドの継続を確認します。ここでの隠れダイバージェンスは、価格が前回より低い高値を付ける一方でA/Dが高値を更新することを示しており、買いの勢いが効果を持たなかったことを示すため、下降トレンドのショートを継続する絶好のタイミングを示唆しています。Pattern_7のテストでは、次のレポートが得られました。
Pattern_7はフォワードウォークで利益を出すことも可能で、ほぼPattern_6と同等の成果が期待できます。その強みは、隠れダイバージェンスが強いトレンド継続に先行するという考え方に基づくといえます。隠れダイバージェンスは、対抗する出来高圧力があってもトレンドが維持されることを示し、トレンドの回復力を明らかにします。A/Dを用いて隠れダイバージェンスを確認することで、従来のモメンタムベースの隠れダイバージェンスに出来高の視点を加えることができます。「出来高は嘘をつかない」と言われる通り、大きな出来高がトレンド構造を破れなかった場合、残る側がさらに強く返ってくることが多いのです。このパターンは、ブレイクアウトで新しい高値・安値が形成される前のトレンド中の再参入にも適しています。要するに、逆トレンドの動きが空振りだったことを観察できるわけです。ゲーターの役割は、トレンドが実際に維持されていたことを確認することです。顎、歯、唇のバッファが反転せず、かつゲーターが持続的な両赤(=休眠モード)にならなかった場合、トレンドは単に一息ついただけであることを示しています。
このように、ゲーターとA/Dオシレーターの隠れダイバージェンスを組み合わせることで、最適なトレンド継続パターンをフィルタリングできます。FXでは、これらは通常、重要なフィボナッチリトレースメントレベル付近で発生します。たとえば、上昇トレンド中の通貨ペアが50%リトレースメントで高値更新の押し目を作り、高い出来高を伴った場合、価格はサポートを下抜けせず、多くの取引がおこなわれたことを示しており、その後再び上昇する可能性が高いです。A/Dが価格よりも下落した場合(隠れ強気ダイバージェンスの例)、トレーダーはそのサポートで自信を持って買い、次の波に乗ることができます。
一方で、Pattern_7の弱点は、隠れダイバージェンスは通常のダイバージェンスより識別が難しいことです。価格が極端な高値・安値を付けないため、サインはより微妙で、指標の方が目立つことになります。そのため、通常の出来高急増を隠れダイバージェンスと誤認するリスクがあります。たとえば、健全な上昇トレンドの押し目では、下落局面で出来高が増加しA/Dが一時的に下がることがありますが、これは必ずしも強気が劣勢であることを意味するわけではなく、単なる振るい落としである場合もあります。そのため、価格が高値更新の押し目を維持していることを常に確認する必要があります。このパターンのショートシグナルを示すチャートの例は、次のように現れることがあります。

アリゲータークロスオーバー反転 + 出来高スパイク(主要トレンド反転シグナル)(Pattern_8)
最後から2番目のパターンで(Pattern_8)は、ゲーターのクロスオーバー反転に基づいています。強気のセットアップにおいて、このシグナルパターンは明確なゲーターのクロスオーバーと強力な出来高の手掛かりを組み合わせることで、主要なトレンド転換ポイントを特定します。強気シナリオは、顕著な下降トレンドの終盤で展開し始めます。まず、ゲーターの顎(青)、歯(赤)、唇(緑)が強気のクロスオーバーを形成します。通常、緑の唇が下から上へと赤い歯および青い顎を上抜けることで、モメンタムが上向きに転じ、新たな上昇トレンドが始まりつつあることを示唆します。同時に、ゲーターオシレーターでは、これらのラインが収束するにつれてヒストグラムがゼロライン付近で縮小し、その後ラインが強気の順序に並び替わることで色が緑に変化します。このゲーターの「覚醒」から「逆方向への捕食」へと移行する動きが、明確なトレンド転換を示します。
次に、出来高による確認はA/Dラインから得られます。理想的には、クロスオーバーの発生時、またはその直前にA/Dラインが顕著な強気の出来高スパイクを示すか、直近のレベルと比較して極端な高値を記録します。これは、トレンド転換に伴う買い出来高の急増を意味します。たとえば、底値圏での投げ売り(キャピチュレーション)により出来高が急増し、その後価格が上昇に転じ、顎、歯、唇の移動平均を上抜け、同時にA/Dラインが出来高イベントを伴って急上昇するようなケースです。このような動きは実際の買い需要の強さを裏付けます。
このように、顎、歯、唇のクロスオーバーという基礎的な買いシグナルに、A/Dラインの出来高クライマックスまたは上方ブレイクを組み合わせることで、非常に強力な強気の反転シグナルが形成されます。これは価格が単に反転しただけでなく、その転換が大口投資家などによる実際の出来高の裏付けを伴っていることを示しています。このパターンが現れた際にはしばしば持続的な上昇トレンドの始まりとなるので、トレーダーは自信を持ってロングポジションを取ることができます。MQL5ではPattern_8を次のように実装します。
//+------------------------------------------------------------------+ //| Check for Pattern 8. | //+------------------------------------------------------------------+ bool CSignalGator_AD::IsPattern_8(ENUM_POSITION_TYPE T) { if ( clrRed == Color_UP(m_gator, X()) && clrRed == Color_LO(m_gator, X()) && STD_DEV(X()) <= fmax(Gator_UP(m_gator, X()), Gator_LO(m_gator, X())) && 5.0*STD_DEV(X()) > (AD_Max(X() + 1, 2) - AD_Min(X() + 1, 2)) ) { if ( T == POSITION_TYPE_BUY && Close(X()) > 0.5 * (High(X() + 1) + Low(X() + 1)) && AD(X()) > AD(X() + 1) ) { return(true); } else if ( T == POSITION_TYPE_SELL && Close(X()) < 0.5 * (High(X() + 1) + Low(X() + 1)) && AD(X()) < AD(X() + 1) ) { return(true); } } return(false); }
先ほど説明した強気セットアップの反対側となるのが、この弱気セットアップです。これは、強い上昇トレンドが終わりを迎える局面で、顎、歯、唇のクロスオーバーが下降方向へ転じ、さらに出来高スパイクを伴うことで示される主要な弱気反転シグナルです。このとき、唇(通常は緑のライン)が上から下へと歯(赤)および顎(青)を下抜け、ラインの階層が反転します。これにより、チャート上では明確な弱気の構えが形成されます。ゲーターオシレーターは収縮を見せた後、上側・下側の両ヒストグラムが緑に反転し始め、下降トレンドの発展を示唆します。このシグナルが騙し(ウィップソー)ではなく、真のトレンド転換であることを確認するために、A/Dラインを参照します。クロスオーバーの前後でA/Dラインに顕著な下落、またはマイナス方向へのスパイクが見られる場合、大口の売り(分配)が発生していることを示す強力な確認シグナルとなります。これは一般的に、クライマックストップ(上昇の最終局面)で観測され、出来高を伴った価格の急上昇が直後に反転し、価格が移動平均バッファを割り込むような形で現れます。
A/Dラインはこのとき、ピークを形成した後に急落するか、少なくとも上昇トレンドラインを明確に下抜けるでしょう。これは市場が配布へと移行したことを意味します。ゲーターの移動平均バッファが下降方向にクロスし、出来高が買い手の大規模な撤退を示す場合、相場は本格的な下降トレンドへ移行する準備が整った状態です。したがって、トレーダーはこのパターンを確認した時点でショートポジションを仕掛けることができ、新たな弱気トレンドの初動を効果的に捉えることが可能です。Pattern_8のテスト結果は、次のレポートの通りです。
Pattern_8は、比較的多くの取引をおこなうアクティブなシグナルのひとつです。そのため、資産曲線には一部で荒い動きが見られるものの、全体としては効果的にフォワードウォークし、安定して利益を積み上げることができます。このパターンの強みは、まず明確でルールベースなトレンド転換トリガーと、出来高による裏付けを組み合わせている点にあります。一見単純に聞こえるかもしれませんが、それぞれの要素が互いの弱点を補い合う構造になっています。ゲーターのクロスオーバー単独では、相場が振られやすい局面でシグナルが遅れたり、誤シグナルになることがあります。しかし、そこに「出来高スパイク」という条件を加えることで、本当に意味のあるクロス、すなわち実際に大きな取引量を伴う動きだけを抽出することができます。
逆に、出来高スパイク単独でも相場の転換点を示す場合がありますが、フォローのない一過性のイベントで終わることも少なくありません。そのため、トレンド構造が実際にクロスオーバーによって変化したことを確認することが重要です。これにより、単なる出来高の急増で終わる場面を除外することができます。この出来高とクロスの相乗効果こそが、市場体制転換の瞬間を正確に捉える鍵となります。このパターンは、H4以上のような高い時間足で特に有効です。典型的なシナリオとして、長期の下落トレンドの後に、大きな出来高を伴った強力な強気の包み足が出現し、ゲーターの移動平均バッファが収束・クロスすることで教科書的な反転を示し、その後複数セッションにわたる上昇相場を引き起こすといったケースが挙げられます。
このパターンのもう1つの強みは、心理的な側面にもあります。多くのトレンドフォロワーは、明確なトレンド転換を信じるまでに時間がかかります。しかし、出来高とクロスオーバーのシグナルによって、トレーダーは「ゲーターが目覚めて食べ始める」初動の段階で早期にエントリーすることが可能です。これにより、ストップを直近のピボットの外側に置くだけで、潜在的に大きな値幅を狙える有利なリスクリワード構造を取ることができます。
多時間足の方向整合(上位足のゲータートレンド+下位足の出来高確認エントリー)(Pattern_9)
最後のシグナルパターンは、複数の時間軸を組み合わせた方向整合型のセットアップです。強気の方向整合は、2つの時間足を活用してシグナルの信頼性を高める戦略的な構成となっています。たとえば、H4とM30を組み合わせる場合、上位のH4においてゲーターオシレーターが明確な捕食期、すなわち積極的に動いている状態にあるか、あるいは休眠状態から目覚め、上昇方向に動き始めている状況であれば、マクロ的に上昇バイアスが働いていると判断できます。このとき、下位のプライマリー時間足(M30など)でA/Dラインが数週間にわたって蓄積を示している場合、トレーダーは上位トレンドと方向整合する形での強気のゲーター+出来高シグナルを待ちます。
たとえば、下位足においてゲーターが休眠状態にある押し目やレンジ局面が見られる場合、その後にPattern_1のような強気ブレイクアウト、あるいはPattern_3のような押し目買い継続型のシグナルが発生することがあります。これが上位足の上昇トレンド方向と一致していれば、成功確率は大幅に高まります。A/Dラインの確認は、下位もしくはプライマリー時間足でおこないます。この方向整合、つまり「上位足の強気トレンドの中で発生する下位足の強気パターン」という構図は、取引の勝率を著しく高めます。要するに、上位足のゲーターはトレンド方向を確認するフィルタとして機能し、下位足のA/Dは出来高による正確なエントリートリガーを提供するという関係になります。もう1つの具体例として、GBP/JPYのH4チャートで、ゲーターの移動平均線が上向きに拡がり、A/Dラインも上向きトレンドを示している状況を考えます。このとき、M30チャートで局所的なA/Dスパイクが発生した場合、主要トレンドに沿ってロングエントリーする根拠がさらに強まります。このようにして、支配的トレンドに従った取引が可能になります。これをMQL5で次のように実装します。
//+------------------------------------------------------------------+ //| Check for Pattern 9. | //+------------------------------------------------------------------+ bool CSignalGator_AD::IsPattern_9(ENUM_POSITION_TYPE T) { if ( clrGreen == Color_UP(m_gator, X()) && clrGreen == Color_LO(m_gator, X()) && (clrGreen == Color_UP(m_gator_h4, X()) || clrGreen == Color_LO(m_gator_h4, X())) ) { //printf(__FUNCSIG__+" close- "+DoubleToString(Close(X()))+", range- "+DoubleToString(0.5 * (High(X() + 1) + Low(X() + 1)))); if ( T == POSITION_TYPE_BUY && Close(X()) > High(X() + 1) && AD(X()) < AD(X() + 1) && CloseH4(X()) > CloseH4(X() + 1) ) { return(true); } else if ( T == POSITION_TYPE_SELL && Close(X()) < Low(X() + 1) && AD(X()) < AD(X() + 1) && CloseH4(X()) < CloseH4(X() + 1) ) { return(true); } } return(false); }
同様に、弱気の方向整合は、上位足で一貫した分配が見られる下降トレンドの状態を示します。これは、ゲーターが下降方向にトレンドしており、A/Dラインが分配を示している状況を意味します。ゲーターは基本的にトレンドニュートラルな指標であるため、上位足と下位足の両方で価格アクションを確認する必要があります。これは、先ほどの実装例でも示した通りです。たとえば、小規模な上昇(戻り)局面が発生し、それがPattern_8で見られたような弱気のダイバージェンス(逆行)を伴って終わる場合や、Pattern_1で示したように、短期的なレンジ相場がゲーターの「覚醒」とともに下抜けするようなケースが該当します。
また、下位足チャートで以前説明した弱気パターン(例:Pattern_3、Pattern_8など)が現れ、同時に上位足が売り優勢の環境を示している場合も、非常に信頼性の高いショート機会となります。このような状況でショートエントリーを行うことで、取引の勝率を有利に傾けることができます。実行足で出来高による確認が得られれば、直近の値動きが有効であることを示します。一方、上位足のゲーターが下降方向のトレンドを維持していることにより、その動きが大局的な流れに逆らっていないことが保証されます。テスト結果では、以下のレポートのとおり、この手法がフォワードウォークにおいても安定して利益を上げられることが確認されています。

このパターンを実装する際に重要なのは、同期させることが目的であって、硬直させることではない、という点です。取引を管理する際には、下位時間足の一般的なテイクプロフィット目標で部分利確をおこなうなど、スケールアウトの手法を取り入れるのも有効です。また、常に上位時間足のボラティリティを考慮することが重要です。ATR値が大きい場合は、ポジションサイズを小さく設定する必要があるでしょう。Pattern_9は、すべてのシグナルを市場環境と整合させることで、より堅牢なトレード判断をおこなうことを目的としたアプローチです。
結論
ここまでで、ゲーターオシレーターおよびA/Dオシレーターに基づく、最後の5つのシグナルパターンを検討してきました。これには、偽のブレイクアウトの処理、レンジ内での蓄積の管理、隠れダイバージェンスへの対処、主要なトレンドの反転への対処、多時間足の方向整合など、いくつかのトピックが含まれています。これらのセットアップはいずれも、フォワードウォークテストにおいて良好な結果を示し、全体的なパフォーマンス向上に寄与する傾向が確認されました。ただし、ここで示す短期ウィンドウのテストレポートの解釈には、通常通りの注意が必要です。次回の記事では、前回すでに取り上げたPattern_0、Pattern_3、Pattern_4といった課題の残るシグナル群に対して、教師あり学習がどのような改善をもたらせるかを検証していく予定です。
| 名前 | 説明 |
|---|---|
| wz-77.mq5 | ヘッダにインクルードファイルを示すウィザード組み立てEA |
| SignalWZ_77.mqh | MQL5ウィザードで使用されるカスタムシグナルクラスファイル(利用ガイドはこちら) |
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