EA(エキスパートアドバイザー)をめぐる会話は、たいてい同じ場所から始まります。エントリーです。どのインジケーターか、どのパターンか、どのセッションか、どの時間足か。リスク管理は、登場するとしても最後です——末尾にボルト留めされたストップロス、感覚で選ばれたロットサイズ。
私たちは逆の順序で作ります。システムがどう勝つかを問う前に、どう負けるか、いくらまで負けてよいか、負けたあとに何が起きるべきかを問います。この記事ではその理由を、私たちのUSDJPYポートフォリオEAに搭載している2層の保護機構と、リスク側の設計を誤ると何が起きるかを示す公表済みの数値を使って説明します。高度な数学は一切必要ありません。
なぜ「負ける側」が先なのか
損失側を利益側より先に設計することには、実務的な理由があります。2つの側は、失敗の仕方が違うのです。
平凡なエントリーのアイデアは、テストの中で正体を現します。設計を調整し、再テストすればよく、弱いアイデアの代償は時間です。誤ったリスク設計はドローダウンの中で正体を現し、そのときにはダメージは現実の資金です。エントリールールは失敗後に修正できますが、口座は修正できません。つまり、最初の一発で正しく作らなければならないのは、利益を生む部分ではありません。残りの部分が機能するかどうかを確かめている間に、いくらまで失ってよいかを決める部分です。
算術は同じ主張をもっと無愛想に語ります。20%の損失を取り返すには25%の利益が必要で、50%の損失には100%が必要です。深く落ちるほど非対称性は悪化します。深い穴を避けるシステムが、登り道でそれほどの輝きを必要としないのはこのためです。
もう1つ、静かな理由があります。長期的にはこちらの方が重要かもしれません。利益の数字は、単独では何も意味しません。平均年利12%は、穏やかなシステムの説明にも、恐ろしいシステムの説明にもなり得ます。どちらなのかを決めるのは、その裏にあるドローダウンです。損失側が固定され測定されるまで、リターン側はそもそも解釈不能なのです。
第1層 — 日次サーキットブレーカー
最初の保護層は、1日というスケールで機能します。その日の損失が口座の6%に達すると、EAは翌取引日まで新規ポジションを開くのをやめます。
発想は取引所から借りたものです。取引所は何十年もサーキットブレーカーを使ってきました。為替の悪い日は、孤立した事故としてはめったにやって来ません。ニュースショック、レジームの断絶、そして戦略が想定していなかった状況の周りに群れをなしてやって来ます。1日がすでに大きく崩れたなら、市場があなたのロジックの理解できない状態にある確率は上がっています。そのとき手に入る最も安い保険は、カレンダーがめくれるまでリスクの追加をやめることです。
この層が「しないこと」も正確にしておく価値があります。既存ポジションは閉じません。ドテンもしません。なぜその日が悪かったのかを判断しようともしません。私たちは、賢い適応型ロジックよりも、この種の愚直で機械的な保護を好みます。挙動を予測できない保護層は信頼できない保護層であり、このブレーカー——入力1つ、しきい値1つ、効果1つ——は、完全に理詰めで把握できます。
第2層 — パーマネントストップ
第2の層は、システムの一生というスケールで機能します。口座のエクイティが過去最高値から18%下落したら、EAは恒久的に取引を停止します。自動では再開せず、取り返すために強気に取引するモードも存在しません。
完全自動停止は過激に聞こえるので、理由を丁寧に述べておきます。ピークから18%下にいるシステムは、2つのうちどちらかを告げています。市場が、戦略の対応できない形で変化したか。エッジが、リサーチが示唆していたより弱かったか。どちらもシステムそのものに関する重大な仮説であり、どちらもシステム自身には評価できません。その判断は、まだ資金が手元に残っている人間のものです。ストップの仕事は、人間がその機会を確実に得られるようにすることです。
「自動再開なし」には、システムを運用する人にとっての実務的な意味があります。もしストップが作動したら、再開の判断はレビューを経て、あなたが下します——タイマーでも、隠れたリセットでもなく。まともなレビューが問うのは、ドローダウンを生んだ状況がヒストリカルテストの含んでいた範囲の内か外か、そしてその時点までのライブの挙動がテスト時の挙動と一致していたか、です。正直な答えが「このシステムは引退させるべきだ」になることもあります。自動再開はこの対話を静かに消し去り、止まったことの価値の大半を道連れにします。
しきい値の選択には本物のトレードオフがあります。ストップをきつくしすぎると、ごく普通の統計的ノイズで健全な戦略を止めてしまいます——どんな戦略にも連敗はあり、正常な変動の範囲内に置かれたリミットは、安全装置をランダムなキルスイッチに変えます。緩くしすぎれば、何も守りません。しきい値は、長期テストが実際に生んだドローダウンの範囲の外側に、しかし回復の算術が残酷になる領域の十分内側に、置かれなければなりません。私たちのバックテストでは、推奨設定の最大ドローダウンは19年間で5.2%でした。パーマネントストップは18%——その3倍以上の深さにあります。そこへ到達するということは、ライブのシステムが、20年分のヒストリカルデータが一度も見せなかった挙動をしているということです。
意図的に載せなかった機能
ここまで説明したものはすべて、損失のあとにリスクを減らします。最もよくある要望は逆方向です。負けたら、大きく張って取り返す。
私たちはこの発想を原則論で切り捨てず、検証しました——マーチンゲール、ナンピン、グリッドの各系統にわたる損失回復型サイジングの14バリアントを、12年分のティックデータで。生き残ったものはありません。教訓的だったのは、古典的な「負けたら倍賭け」でした。紙の上では総利益が4倍になります。この種のシステムが繰り返し再発明されるのは、まさにこれが理由です。しかしヒストリカルの実路では、運用1年目のうちにエクイティの−18%に達し、そこへ至るまでに基本サイズの32倍のロットを必要としました。増えた利益はより良いエッジではなく、より多くの「借りた度胸」で握った同じエッジであり、最初の持続的な連敗が請求書を回収しに来ました。
私たちのシステムに損失後へロットを増やす仕組みが一切なく、パーマネントストップに回復モードが付いていないのは、これが理由です。検証の中で、回復追求型のメカニズムが確実にやったことは1つだけでした。破綻確率を引き上げることです。
誤るとどうなるか — 公表済みの1行
私たちのEAが公開しているリスク入力は1つで、設定は3段階です。同じ19年バックテスト(2007〜2026年・実ティックデータ・取引コスト込み)から得た各設定の公表値は次のとおりです。右端の列は取引順序をシャッフルする20,000回のモンテカルロ・シミュレーションからの推定で、それ以外はバックテストの測定値です。
| リスク設定 | 平均年利(19年CAGR) | 最大ドローダウン | 18%パーマネントストップ到達確率 |
|---|---|---|---|
| 標準(推奨) | 12.7% | 5.2% | 1.35% |
| 中 | 16.0% | 6.4% | 7.75% |
| 高 | 2.7% | 19.0% | 17.9% |
最後の行をゆっくり読んでください。直感は「リスクを増やせばリターンが増える」と言い、標準から中への移動はまさにその取引に見えます。CAGRが上がり、ドローダウンが深くなり、ストップ到達確率が無視できない水準になる。ところが「高」設定はこのパターンを完全に壊します。最も攻撃的な設定が、3つの中で最悪の長期リターン——年2.7%——を生んだのです。
メカニズムは難解ではありません。ヒストリカルの実路上で、高リスク設定は2010年の円急騰局面で18%のパーマネントストップに到達しました。システムは設計どおりに動いて停止し、その時点で複利は終わりました。より穏やかな設定がその後積み上げていった成長の年月は、この設定には決して訪れませんでした。しきい値を超えたところでは、リスクはリターン曲線を上にスケールさせませんでした。将来のリターンを、破綻イベントに変換したのです。
私たちはこの行を、見栄えが悪いにもかかわらず商品ページに公表しています。手持ちのどの数字よりも明確に、この論点を伝えてくれるからです。ポジションサイジングは「快適さと利益を交換するダイヤル」ではありません。ある地点を越えると、利益と「終了」を交換するダイヤルになります。
EAを評価するときのリスク表記の読み方
この記事から1つだけ習慣を持ち帰るなら、これにしてください。トレーディングシステムを評価するときは、リスクのセクションを最初に読み、いくつかの質問に答えが出るまで、マーケティング上の数字は解釈不能なものとして扱うことです。
最大ドローダウンが実際には何なのかを尋ねてください——残高ベースかエクイティベースか、何年間のテストか、どんな品質のデータ上か。3年テストのドローダウン値が教えてくれることは、ごくわずかです。
「測定値としてのドローダウン」と「設計上の制約としてのドローダウン」を区別することも役に立ちます。世の中の多くのEAでは、最大ドローダウンは1本のヒストリカルパス上でたまたま起きたことにすぎません。同じ戦略を少し違う10年に通せば、数字は動きます。ハードストップを備えたシステムでは、この数字は2つ目の、より堅い意味を持ちます——将来のパスがどうであれ、損失がそれ以上複利で膨らめない水準です。どちらの数字も有用ですが、両者の混同こそ、買い手が驚くことになる典型的な理由です。
数値がバックテストなのかライブの実績なのかを尋ねてください。どちらも正当ですが、異なる主張であり、誠実なベンダーはラベルを付けます。損失のあとに何が起きるかを尋ねてください。ロットサイズは一定のままか、それとも何らかの回復ロジックが増やすのか。システムが自らを停止する条件は存在するか、そしてその停止は恒久的か、静かに再開するのか。
最後に、そのベンダーが負けている期間を見せたことがあるかを尋ねてください。本物のシステムには必ずあります。長期プラスの記録の内側にある負けの区間は、正常な統計であってスキャンダルではありません。どこにも負け期間が見当たらないトラックレコードは、たいてい編集されています——そして、その編集こそが発見です。
結論
操作の順序が、メッセージのすべてです。リターンの数字を1つでも見る前に、自分が本当に耐えられる最大ドローダウンを固定してください。損失のあとにシステムがしてよいことを決めてください——その答えに「大きく張る」が含まれるなら、資金を託す前に、その仮定を長期のヒストリカルデータで検証してください。機械があなたに制御を返さなければならない条件を知っておいてください。リターンが意味を持つのは、この3つの答えが存在してからです。
Origin-U Projectは、日本を拠点とする独立系のクオンツFXリサーチプロジェクトです。本記事で解説した考え方は、Origin-U Projectが開発した商用USDJPYポートフォリオEA「BUSHIDO」に実装されています。
本記事のパフォーマンス数値はすべて、ヒストリカルデータに基づくバックテストまたはモンテカルロ・シミュレーションの結果です。過去の結果は将来の成績を保証しません。
Origin-U リサーチノート — 全10回 第3回
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English version: Risk Management Before Profit: Designing the Loss Side of a Trading System First
シリーズ全10回
- USDJPY向けマルチストラテジー・ポートフォリオEAの作り方 — 86本の仮説検証が教えてくれたこと
- アルゴリズムトレードで分散が重要になる本当の理由
- 利益よりも先にリスク管理 — トレーディングシステムは「負ける側」から設計する
- 私たちがマーチンゲールとグリッドを使わないと決めた理由 — 検証の記録
- モンテカルロ・シミュレーションでトレーディングシステムを評価する
- 堅牢なFX戦略の条件 — チャートではなく、プロセスを見る
- バックテストとフォワードテストの違い — 同じEAで数字が変わる4つの理由
- トレードのアイデアを実装前にどう評価するか — 86本の仮説を検証した手順
- 低ドローダウンのトレーディングシステム設計 — ドローダウンは「結果」ではなく「入力」である
- 長期USDJPYリサーチから学んだこと — 20年分のティックデータが教えてくれたもの



