レバレッジは個人トレードで最も議論され、最も理解されていない設定です。買い手からは「このEAは500倍が必要ですか」「30倍のほうが安全ですか」と聞かれますが、どちらも問いとして少しずれています。レバレッジは1回の取引でいくら失うかを決めません。それを決めるのはロット数で、0.5ロットのポジションはレバレッジが何倍でも1ポイントあたり同じ額を失います。レバレッジが決めるのは各ポジションが拘束する証拠金の額であり、したがって口座がブローカーのストップアウトにどれだけ近いかです。
証拠金・余剰証拠金・証拠金維持率
証拠金は、建玉のためにブローカーが拘束する預り金で、想定元本÷レバレッジです。余剰証拠金は有効証拠金から拘束分を引いた残り、つまり含み損を吸収したり追加で建てたりできる分です。証拠金維持率は有効証拠金÷拘束証拠金を%にしたものです。これがブローカーのストップアウト水準(多くは20〜50%のどこか)まで下がると、ブローカーが勝手にポジションを閉じ始めます。通常は最大の含み損から、その時点で約定できる価格で。口座を実際に殺すのはこの仕組みで、それがどれだけ遠いかを決めるのがレバレッジです。
同じポジション、2つのレバレッジ
ゴールド0.5ロット、計算しやすいようにゴールド2,000ドル、1ロット100オンスとします。想定元本は100,000ドル。30倍なら拘束証拠金は約3,333ドル、500倍なら200ドルです。口座10,000ドル・ストップアウト50%の場合、30倍の口座は有効証拠金が約1,667ドルまで落ちた時点で強制決済されます。含み損8,333ドル、1ドルあたり50ドル動くので、逆行167ドル分です。500倍の口座は有効証拠金100ドルまで決済されず、逆行198ドル分まで持ちます。つまり30倍の口座は、500倍の口座が耐える値動きでブローカーに閉じられ、しかも1,667ドルを残したまま閉じられます。もちろん、どちらも10,000ドルの口座で持つべきポジションではありません。この例は「どちらのレバレッジが良いか」の話ではなく、同じ取引でも、一度も見たことのない数字ひとつで強制退場の位置が変わるという話です。
それでも高レバレッジのほうがよくある死に方である理由
30倍のトレーダーは証拠金で死にます。500倍のトレーダーはロット数で死にます。0.5ロットに200ドルしか要らないなら5ロットも「買える」ように見え、ゴールド5ロットは1ドル動くごとに500ドル失います。20ドルの逆行で口座は終わりです。この損失を生んだのは高レバレッジではなくロット数ですが、プラットフォームに注文を拒否されずにそのロット数を建てられたのは高レバレッジのおかげです。低レバレッジは小さく建てることを強制し、高レバレッジは大きく建てることを許します。飛んだ口座の大半は後者です。
バックテストは1つのレバレッジで走り、別のレバレッジには持ち越せない
ストラテジーテスターにはレバレッジ設定があり、あなたが見ている結果は特定の1つの値で作られています。同じEAを別のレバレッジの口座で回すと、取引は証拠金が初めて効くまでは同一で、その先はまったく同一ではなくなります。テスターなら建てたポジションをブローカーが拒否する、テスターならドローダウンを持ちこたえたのにブローカーが強制決済する、という形で。これに最も敏感なのがグリッド型・ナンピン型のEAです。段が増えるたびに、有効証拠金が既に落ちている中で拘束証拠金が増えるので、維持率は両側から同時に下がります。報告書では500倍で生き延びたバスケットが、同じ設定のまま100倍では清算されることがあります。グリッド系の結果を信じる前に、テスターのレバレッジを実際の口座に合わせてください。
口座のレバレッジは、銘柄のレバレッジとは限らない
多くのブローカーは指数・暗号資産・一部の金属に独自の証拠金率を割り当てており、それは口座に表示されたレバレッジとは無関係に適用されます。500倍の口座で、同じログインのままゴールドは500倍、暗号資産CFDは5倍ということが普通にあります。スワップフリー口座も証拠金率が高めだったり、一定の保有期間後に引き上げられたりします。口座設定の数字は上限であって約束ではなく、本当の数字はターミナルの銘柄仕様にあります。
リスクプリセットを選ぶ前に
実際に取引するブローカーで、接尾辞を含む正確な銘柄の仕様を開いてください。契約サイズ、証拠金率、両建て時の証拠金ルールを読みます。EAの同時最大エクスポージャーが拘束する証拠金を計算し、EAのバックテスト上の最悪ドローダウンでその維持率がどこに来るかを確かめます。プリセットを選ぶのはその後です。順番を逆にすると、「報告書では20%以上負けたことがない」EAがなぜ自分の口座を50%で閉じたのか、と尋ねる側に回ることになります。
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