インドSDR入りは10年先か 改革のスピード感で中国との差

インドSDR入りは10年先か 改革のスピード感で中国との差

5 12月 2015, 09:00
Yamaguchi Katashi
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中国人民元 ついに国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用された。インドが取り残されてしまった。中国がIMFのエリート入りを果たすために様々な改革を打ち出したのと対照的に、インドは自由化に慎重であり、通貨ルピーがSDRに組み入れられるのは少なくとも10年先と見られる。

SDR入りするには「自由に利用可能」でなければならない。イコールその通貨が国際取引で広く利用され、一般的に取引されることが必要であり、中国は条件を満たすために改革を行った。

その成果があり、IMFは11月30日の理事会で人民元をドルやユーロ、ポンド、円と共にSDRに組み入れることを決定した。

インド政府もまた、国際社会におけるインドの地位を高め、ルピーの活用を拡大するという考えがある。インド経済は1980年には中国経済とほぼ同規模だったが、中国経済はその後急速に発展し、今ではインド経済の4倍半以上になっている。

ただインドでは経済の安定性に不安があるため、完全兌換(だかん)性実現を唱えるラジャン中銀総裁らの間ですら、大胆な改革への機運は少ない。

インドのSDR入りに10年以上はかかると見られる理由だ。

ルネッサンス・キャピタルのグローバルチーフエコノミスト、チャールズ・ロバートソン氏は「当社の推移では、インドのGDP(国内総生産)は2027年になっても約6兆ドル程度と、今の中国を下回っている」と指摘。「政治が積極的な役割を果たさない限り、ルピーが2030年より前に世界の準備通貨になることはない」と述べた。

インド中銀のラジャン総裁は1日、IMFが人民元のSDR採用を決定したことについて、インドは正しい方向に進んでいると強調した。

総裁は「経済の開放に向け着実に進んでいる」とし、「安定性に懸念も残るため、しっかりと管理下に置きつつ物事を進める」と述べた。

インド中銀はこれまで、企業の海外でのルピー建て債券発行を容易にするための措置(マサラ債)を講じたり、外国人投資家によるインド国内のルピー建て債券の投資拡大を容認するなどの措置をとってきた。

総裁は、こうした措置について「開放を目指したものだが、コントロールを失うようなビッグバンではない。段階的な手続きだ」とした。

総裁は、人民元のSDR入り後は改革圧力が後退するのではないかとし、中国が現在のペースで開放を続けるのかどうか不透明と述べた。

インドは1991年から経済開放を開始。ルピーは当時、兌換性がほぼないペッグ通貨だったが、現在は管理変動相場制となっている。

バークレイズのリージョナルエコノミスト、ラウル・バジョリア氏は「これは実質的に資本勘定の自由化だ。慎重かつ実用的に行われており、よりルールベースになった。非常に良いシグナルだ」と話す。

ただ、アナリストらは、国際競争力向上に向けた大胆な構造改革という点ではインドは中国にすぐには追いつけない、と口をそろえる。

バークレイズのバジョリア氏は「中国は2005年から、本格的に自由化に向けて動き出した。つまり(SDRへの採用までに)10年程度かかった」と述べ、「インドの道のりは長い」と述べた。

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