有力な金融専門家がリセッション(景気後退)や危機の到来を警告したり、利回り追求のコツについてヒントをくれたりする。専門家の来年の展望を聞いてみよう。
◎世界的なリセッションに警戒を モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの新興市場株式・グローバルマクロ責任者ルチル・シャルマ氏
「あと一つ大きな衝撃があればそれで、世界的な景気低迷が訪れるだろう。次の衝撃は恐らく、多額の債務と過剰投資、人口減少が組み合わさって成長を圧迫する中国が震源となろう。一方、東欧や南アジアの比較的債務の少ない国は、不可避の次の景気サイクル転換をより乗り切りやすい立場にあるようだ」
◎債券市場は前途多難 ルーミス・セイレス副会長で「ルーミス・セイレス・ボンド・ファンド」(運用資産200億ドル=約2兆4600億円)の共同ポートフォリオマネジャーのダン・ファス氏
ファス氏は10年物米国債利回りが2016年末までに2.6-2.8%に上昇する可能性が高いとしながらも、現在の地政学的混乱が予測を特に困難にしていると指摘。この前途多難な時代に債券ポートフォリオを持つ投資家が来年最も成功しそうな運用対象として、米国債と投資適格級社債(年限は5-12年)、高利回り債の組み合わせを挙げた。高利回り債については、インデックスファンドに依存するよりも極めて念入りに選別する必要があると付け加えた。
◎注目すべき株式を知る ファンドストラット・グローバル・アドバイザー ズのマネジングパートナー、トーマス・J・リー氏
「株式は16年にとても好調になるだろう。銀行株と優良株は特にそうだ。銀行は米金融引き締めで恩恵を受け、株主資本利益率(ROE)は景気拡大で高まるだろう。優良株に目を向ければ、景気加速で収益を拡大する力があるだろう」
◎EUは未曾有の難局に直面する ベセマー・トラストの最高投資責任者(CIO)、レベッカ・パターソン氏
パターソン氏は欧州にとって来年の最大のリスクは「難民危機だ」と述べ、「欧州連合(EU)にとって未曾有の難局だと思う。パリ同時多発テロ事件を受け、難民危機が政治や政策のシフト、あるいは消費者の支出パターンの変化につながるリスクが高まった。いずれも、欧州の成長や企業収益についてのセンチメントの重しになり得る」と分析。「欧州の難民危機が向こう1年に市場にどのような影響を及ぼすかについて、世界の投資家がじっくりと考えたかどうか私はまだ確信が持てない」と語った。
◎利回り追求の動きが強まる 世界最大の資産運用会社ブラックロックのグローバルチーフ投資ストラテジストのラス・ケステリッヒ氏
ケステリッヒ氏はイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げを漸進的に実施すると予想し、「2016年の米金融当局は今年ほど重要視されないだろう」と述べた。また、世界の経済成長は緩慢な状況が続き、高利回り資産を追求する動きが強まるとの見方を示した。金融危機前に購入した高クーポンの債券に依存してきた投資家も、これらの債券が満期を迎えつつあり同様の有利な債券は手に入らないと指摘。「リスクなしのクーポン収入を見つけることはできないだろう」と語った。