アベノミクスは失敗、必要なのは円高=サクソバンクCIOインタビュー

アベノミクスは失敗、必要なのは円高=サクソバンクCIOインタビュー

22 11月 2015, 17:55
Yamaguchi Katashi
0
281

デンマークの投資銀行サクソバンクのスティーン・ヤコブセン最高運用責任者(CIO)は17日に、ロイターとのインタビューで、安倍晋三首相の経済政策であるアベノミクスについて失敗と語った。そして日本には円高が必要であると伝えた。また、日本企業は為替を言い訳にして改革を怠っている。利益の増加や生産性の向上などを進めるべきだと語った。

コペンハーゲンに本拠を置き、デリバティブ取引の大手で、毎年末に発表する向こう1年の金融市場に関する「予測」でも知られる同行だが、ヤコブセン氏はチーフ・エコノミストとしてその予測の責任者も務めている。

インタビューは以下の通り。

――日本経済の現状をどう感じているか。

「アベノミクスは失敗。(「アベノミクス2.0」として打ち出された)新三本の矢は、もはや矢ではない。構造改革はどこに行ったのか」

「中央銀行が低金利政策をさらに継続しても効果がないことは政策担当者や学識者も認めている。それよりも財政政策に対する負の影響が上回っている。

そのため日銀も追加金融緩和に踏み切っていない」

「日本の公的債務の対国内総生産(GDP)比はすでに高く、日銀も政府も、本来やるべき減税ができず手詰まり状態になっている。

「日銀のバランスシートは今も拡大しているものの、拡大のペース自体は鈍った。その傾向は今後さらに強まるとみている」

――為替について。

「ドル円相場の上昇に伴い資産価格は上昇してきたが、それも終わるだろう。一時的に130円まで上昇する可能性はあるものの、1年後にはドルが下落し、2年後にはさらに一段のドル安が進む可能性がある」

「ドル下落は、私は2016年に起きると考える。ドル安であれば、コモディティ価格は安定し、新興国市場の投資意欲は高まり、それにより日米欧の輸出セクターへの追い風となり、世界経済の成長をもたらす」

「もし私の予想が外れて来年ドル高が進むなら、世界経済は減速してデフレに直面し、新興国市場はさらなる危機をむかえる」

――日本に求められることは。

「私は、日本に必要なのは円高だと思う。

日本は今年を振り返り、低金利、エネルギー安、円安の1年の末にリセッション(景気後退)に陥っている(16日発表の7─9月期GDPが2四半期連続でマイナスとなり、欧米の定義ではリセッション入りである)。

円安は資産価格を上昇させるが、それは長期的かつ継続的な企業の収益力強化や生産性向上に基づくものではなく、日本経済の問題の解決とはならない」

「通貨安政策は、他国に負担を負わせて時間稼ぎをしているだけだ。日本は本当にすべきことを見失っており、国内企業の設備投資は落ち込み、日本の競争力は弱まった。

円安の恩恵を受けるのは主に輸出企業だが、同セクターがGDPに占める割合は減少している。一方で、輸入価格の上昇により多くの日本人の可処分所得は減っている」

「日本には目覚まし時計が必要だ。長い眠りから呼び覚まされなくてはならない。それができるのは円高だと思う。

日本企業はかつては円高、今は円安を言い訳にし十分な改革を進めず、政府や取引先企業との近過ぎる関係を解消していない。

しかし為替は一時しのぎ。問題は円ではなく、イノベーションやガバナンス、収益構造の改革、経済が政府の強過ぎる影響力から脱することができるかどうかである」