記事「取引におけるニューラルネットワーク:二重アテンションベースのトレンド予測モデル」についてのディスカッション

 

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前回の記事で取り上げた時系列の区分線形表現の活用について、引き続き議論します。本日は、この手法を他の時系列分析手法と組み合わせることで、価格動向の予測精度を向上させる方法を探ります。

金融時系列の予測と分析に関する研究は数多くおこなわれてきました。従来の統計手法では、時系列が線形プロセスによって生成されると仮定されることが多く、非線形な動きを捉えるには限界があります。一方、機械学習やディープラーニングの手法は、非線形な関係を捉える能力に優れているため、金融時系列のモデリングにおいて高い成功を収めています。多くの研究では、特定の時点における特徴量を抽出し、それをモデリングや予測に活用するアプローチが取られています。しかし、このような手法では、データ間の相互作用や短期的な変動の継続性が見落とされがちです。

こうした課題を克服するため、研究「A Dual-Attention-Based Stock Price Trend Prediction Model With Dual Features」では、二重特徴量抽出手法を提案しています。この手法では、個々の時点だけでなく、複数の時間範囲にわたる情報を活用します。市場の短期特徴量と時間的長期特徴量を統合することで、予測精度の向上を図ります。本モデルは、エンコーダー-デコーダーアーキテクチャを基盤としており、エンコーダーとデコーダーの両ステージにアテンションメカニズムを導入することで、長い時系列データの中から最も関連性の高い特徴量を抽出できるよう設計されています。

本研究では、二重特徴量抽出と二重アテンションメカニズムを用いた新しい株価トレンド予測モデル (TPM: Trend Prediction Model) を提案します。TPMは、株価の変動方向と持続期間の両方を予測することを目的としています。提案手法の主な貢献は以下のとおりです。

  1. 異なる時間範囲を活用した新しい二重特徴量抽出手法:重要な市場情報を効果的に抽出し、予測の精度を向上させます。TPMでは、区分線形回帰と畳み込みニューラルネットワークを組み合わせることで、金融時系列データから長期および短期の市場特徴量をそれぞれ抽出します。市場情報を二重の特徴量として表現することで、モデルの予測性能を大幅に向上させています。
  2. エンコーダー-デコーダー構造と二重アテンションメカニズムを使用した株価トレンド予測モデル(TPM):エンコーダーおよびデコーダーステージの両方にアテンションメカニズムを導入することで、最も関連性の高い短期的な市場特徴量を適応的に選択し、長期的な時間的特徴量と統合することで予測精度を向上させます。

作者: Dmitriy Gizlyk