テクニカル分析と市場予測の手法について

Oles Filonenko | 21 12月, 2015


本稿は、Stairway to Heaven LLCによって行われた理論と実践的な研究に基づいて書かれており、メタトレーダー4のWild Cat's Strategics® 分析システムのサポート・ドキュメントのオリジナル部分が含まれています。Stairway to Heaven LLCはメタトレーダー4The Wild Cat's Strategics®の所有物です。 ロシア連邦の公的機関によって知的財産、特許及び商標登録がなされています。この出版物の著作権は、システムの開発者である記事の著者に属します。本稿に添付されたプログラム・コードは、その作者が著作権者としてコードに含まれている以前公開されたスクリプトとインディケーターに基づいています。

はじめに

本稿では、一般的な問題の概要を手短に説明し、コンセプトの基本原則を紹介し、金融市場やテクニカル分析、トレード概念などの新たな展望となる骨格を形成して、セットタスクを徐々に解決していきます。

解決方法は、既に著作権で保護されているタスクの一部の代替的な実施をおこなうことです。したがって、本稿の目標の一つは、開発者の研究への興味や、より高度な、かつ斬新かもしれない他の解決策の模索への興味をひかせることです。

トレーダーは、分析や予測のための、すぐに使用できる技術的なツールが提供されています。このツールは、多くのユーザーの信頼を得た、2007年に出版されたExtended Regression StopAndReverse(拡張回帰ストップ&リバース)インジケーター開発の次の段階でです。それによると、ツールのプログラムコードは、開発者に彼ら独自のソリューション実行におけるデータ提示のエンド・モジュールとして利用されています。


1. 構成の概要一般的なコンセプト

1.1. 大きなタスク設定

重大な開発のかなりの数は、市場の数学的特徴を数式化しようとする試みや、金融商品の価格の内部・外部依存関係の様々な研究に専念してきました。

それらは何の見込みもない結論を導き出します。市場は、トレーダーの予測に対し大きな自己防衛能力を持っており、実践的なトレードに重要なトレーダーの大半が使用するタイムフレームで、予測精度の信頼性を確保するのに役立つ異なる科学指向モデルを通して、"しみ出し(必ず例外が発生する)"と定義された機能を持っている、というものです。

ジョージ・ソロスの格言を引用すれば、この状況がなんであるか理解できると思います。

...トレーダーは、市場を完璧に掌握することはでない。彼ら自身の思考が常に市場に影響を与え、市場が彼らの思考に影響を与えているのだから。

このことは、市場の完全決定論的数学的モデルを開発することは不可能である、ということを意味しているのでしょうか?一般的に言って、実際のトレードで、この問いへの解答を求めても意味がありません。トレードは、科学よりも芸術的特徴があるものだからです。とは言え、科学はトレード・プロセスをサポートできる大きな潜在能力があります。

金融市場で機能するように作られた科学的手法やアプローチがあります。ここでは、そのようなアプリケーション自体へのアプローチに特に重点を置くことが重要です。トレードに重要なことは何でしょうか?私は、メカニカル・'ブラックボックス'トレードシステム(Mechanical 'Black Box' Trading Systems (MTS))と言われているシステムについていくつか述べさせてください。私たちは、MTSの利点や欠点について細かく掘り下げることはできますが、非常に有望でないにせよ、最終的な結論にのみ関心があります。

トレーダーの大部分は、MTSが持つ規則や開発精度、それらプログラムの避けがたいエラーの罠に簡単にかかってしまうので、トレードは芸術から欠陥が隠れて予測不可能な障害発生メカニズムに変わってしまいます。 

また、いつどんな価格変動の領域にMTSを適用できるのか、またできないのか、トレーダーは十分な知識と明確な理解を持つ必要があります。しかし、その適用要件は、頻繁に満たされるわけではなく、トレーダーは、MTSを使ったシンプルな見た目のため、分析しなければならいと考える習慣から抜け出します。とは言え、ここではMTSの議論は控えたいと思います。

他に大事なことは、トレーダーは、市場での行動を決定、調整するために、極めて正確な予測を必要とするということです。予測は2つのグループに分けることができます。科学的手法に基づく様々な予測の集合体としてのグループと、補完データを直接転送する形式のグループです。

より明確にするために、チャート上に非常によく似た2つの曲線を使って例を示します。1番目の曲線は、ロシアの'キャタピラー'として知られる特異スペクトル解析を使用して構築したものです。2番目の曲線は単純な移動平均線シフトを表したものです。この例は最良の例ではないかもしれませんが、ここではそれは問題ではありません。ここではこれらの2つの方法の利点と欠点について考えてはいきません。重要なことは、どちらも別のトレーダーによって、いくらか利用価値があるものとして使用されているという事実です。

両方の方法は、計算も移動平均線の表示も、何も未来を予測できませんが、SSAがいくつかのパラメーターの将来の変化を予測しようとする点で違いがあります。厳密に言うと、2番目の方法で予測できないのです。予測は、予測ツールとしての移動平均線自体、値に基づいてトレーダーが提供するものだからです。どちらの方法でも、トレーダーはいくらか分析するものです。

したがって、科学的予測に基づくトレードは、市場での取引を円滑におこなうサポートをしてくれます。もちろんまだ、受け入れがたい取引の遅延など、予測エラーは多々あり大きなリスクとうまく付き合っていかなければいけませんが。

その一方で、直接データー転送に基づくトレードは、数学的な計算/予測に起因するエラーを排除し、トレーダーの知的努力を助けてくれます。大多数のトレーダーの心理や精神状態の違いについて考え、それらを平均化したならば、一般的なケースでのトレード結果は、実際には予測する2つのグループに、特に差がないことが分かります。

多いな違いは、科学的予測技術が極めて複雑になってしまい、エラーが発生する確率、その数や大きさが増加すると現れてきます。ある人は初期条件と最終結果との間に矛盾があるんだと考えるでしょう。

確かに、科学的手法を使った予測を作成してみても、平易な技術では、正確性という点で十分な結果が得られないでしょう。技術がより複雑になるにつれてエラーが増加するのを避けるにはどうしたらよいでしょうか?また、そのエラーが予測精度に影響を与え始めることがないようにするにはどうしたらよいでしょうか?これは奇妙な問題で、簡単に論理崩壊を導くでしょうし、単純な方法とそれらを組み合わせただけの、時間つぶしでしかない解決策を作ってしまうことになってしまいます。

どこで、どのように、ソースと結果、計算方法の複雑さと最終結果の精度との中庸を見つければよいでしょうか?解決策はたくさんあるかもしれません。少なくともそれらの1つを、以下に見ていきましょう。


1.2. タスク構成

テクニカル・トレードについてみていきますので、初期データは相場ヒストリカル・データだけ使用します。つまりバーの本数とボリューム値のないバーの4値(始値、終値、高値、安値)を使用するということです。ボリューム値は、ソース元によって大きくちがい、実際のトレードのボリュームとは違いますので、無視すべきです。計算でボリューム値を使用することに意味はありません。同じプライス・データを使っても違う予測結果を得てしまいます。それ自体、タスクと相いれないからです。

一方で、考慮中の金融商品の値動きには、すでに実際の、真のトレード・ボリュームに関する情報を含んでいるものなのです。バーの4値に直接含まれているのです。手元にある数値を処理し、チャート上に処理データを表示していきましょう。

問題を複雑にしないように、タスクを2つのパートに分けます。ある科学的手法を使用したデータの前処理と、データ表示が続く後処理です。タスクに最初から最後まできちんと取り組んでみましょう。


1.3. 2番目のタスクの解決方法

既にチャート上に表示した前処理データがあるとします。予測分析にしようする材料に起因する歪みを最小限にするためには、どんな方法、アプローチ、データ表示法が良いのでしょうか?

数学的装置は、上記で指定された基準を満たす方法として回帰分析を選択することができるので、使用に耐える解決策を提供しています。

回帰分析は、依存関係を研究するための統計的手法です。ある観点からは、初期材料の破壊を伴わないシンプルなデータ表示方法と言えるものです。回帰分析の別の目的は、従属変数の値の予測です。この方法はこのタスクに取り組むのに最適なものです。

では、2番目のタスクはもう解決できるのでしょうか?いいえ、まだです。解決策の概要を述べただけです。回帰式の種類を決定しなければいけません。線形回帰式を使用して、どのような結果が得られるか見ていきましょう。

データの前処理で得られた初期プロット点は、2007年秋の終わり時点でのユーロ/ドルの極値の1つです。標準偏差のチャネルはこのポイントを原点として、線形回帰の中心線を利用して描かれます。


図1ユーロ/ドルに描かれた回帰線からの標準偏差チャネル

これから分かる予測の値は何でしょうか?

チャネルのトレード・ルールはよく知られています。上記の予測値は、トレーダーによって異なるものです。しかし、予測は実際のトレードにおいて極めて有効であり、かなり幅広く利用されています。

また、このような予測の欠陥についても、周知されています。ユーロ/ドルがチャネル上限に到達し、そのまま上昇し続ける場合があるということです。トレーダーは、このような時、リスクとうまく付き合い直感を駆使して選択しなければいけませんでした。

このことは、私たちに次のような疑問を抱かせます。値の予測に関連した回帰分析の目的の1つを、重要な瞬間の意思決定を手助けする予測において、より効果的に利用することができるか?ということです。答えは、イエスです。この目的のためのデータ表示法は回帰多項式に基づいている必要があります。外挿した数値系列がターゲット予測、予知、個性的な予知になるでしょう。

回帰多項式の補間ないし外挿した数値系列の中央曲線に基づいて、同じポイントから同じ標準偏差チャネルを描いてみましょう。


図2ユーロ/ドルに描かれた回帰多項式線からの標準偏差チャネル

悪くないようです。トレーダーはもっと自信をもって堂々とトレードをおこなえば良いのです。この方法のパラメーター誤差は、予測を正反対のものに変えてしますことに注意していください。このようなエラーは、開発者のミスが原因であって、方法自体の特性とは関係ありません。

この方法は、ここでのタスクに取り組むのに最適です。これでデータの表現方法を決定してきたように解決すべきタスクの2番目の部分に取り組むことができます。

実際、値が標準偏差レベルのベクトルに沿って動くようなチャネルよりも親しみ易く、また分かり易いものがあると考えるのは難しいでしょう。ここのケースでは、様々な線形チャネルと比較した場合、それは徹底的に研究され、またさらに見た目からも明らかであるように、これに変わる新しいトレード戦術はなく、予測はより正確なものです。

ここでは、別の視点から分析していきます。トレーダーがマーケット・エントリーやイグジット、ポジション反転のポイントなどを決定することを容易にするにはどうしたらよいでしょうか?"ブラックボックス"の状態におけるトレードシグナルのファクターは、MTSと同じリスクと悪影響をもたらします。追加のオシレーターを使用することは、個人の選択です。ここで重要なことは、トレーダーが使用しているインディケーターが示しているものが何であるか、気づき正確に理解することであって、さもなくばトレーダーはプログラムの餌食になってしまうでしょう。

数学は、この点でトレーダーに何を提供することがでるのでしょうか?一方では、回帰多項式の外挿データは、エントリー/イグジット・エリアの決定に使用される予測自体に警鐘を鳴らします。また一方では、事実上の標準ストップロスのレベルは、市場活動における必然的なエラー結果として生じる損失を制限する要因として働くように、一般的に機能するものです。

アルゴリズムはシンプルでよく知られているように、チャート上の動的なストップロスレベルの表示は大きな問題ではありません。唯一必要なことは、レベルの計算方法を決定することであり、標準偏差の概念はそれ自体有益なものであることを示しました。既に述べた初期ポイントからゼロ・バーまでのレンジ上の価格偏差の計算は、そんなに難しいものではありません。

結果として、このステージで得ることができるテクニカル分析を必要とする全情報は、直接チャート上から取得することができます。多項標準偏差チャネルにおける予想ストップロスレベルは次の図のようになります。


図3多項標準偏差チャネルにおける予想ストップロスレベル

そして、以下は"多項式回帰予測"の図です。


図4多項式回帰予測におけるユーロ/ドルの値動き

最終的なデータはMQL4プログラム・コードの形式で本稿に添付しています。

モジュールは完璧に動作するようになっており、独立したテクニカル・ツールとして使用できます。しかし、その隠された可能性や予測機会は最大限に発揮されるでしょう。いくつかのコンポーネントを1つの複合物として実行するような場合に発揮されます。以下の章で具体的にみていきましょう。

次の内容は、データ前処理のための代替案を探す指針としての役割を果たすことでしょう。


1.4. 1番目のタスクの解決方法

選択されたデータ表示オプションは、一般に、後処理のもう1つの利点である初期基準点の決定ために残りのタスクを絞り込むということに留意してください。

実際、回帰分析法は、心理や数学が複雑に絡み合った諸問題から私たちを救ってくれます。値動きの変化を、調和コンポーネントと、現実に近いより高確率な予測のためのバックボーンとしての初期数系列に対するデータの振幅や歪みを導く他の方法との重ね合わせにおけるスペクトラムや抗力に分解する必要はありません。

しかし、基準点は、単にそれへのポインタとしてどんな方法を用いても決定することができます。それにもかかわらず、問題の解決策は、前処理にかなり厳しい要件を課しています。それは波回帰法と呼ばれる方法で、数学的コンポーネント間の負と正のフィードバックと同じように、その深いループの存在を示唆しています。

市場の法律や、最初に数学的に定義され、また実際に得られた個々の結果から生まれた自然波プロセスを扱う様々な研究者によっておこなわれた長年の作品の評価は、妥当な正確性を持ち、回帰分析を使用した市場構造の値動き変化予測をおこなう、力学的に市場構造を分析する少なくとも1つのセオリーがある、という結論を導き出します。

これは、いわゆるエリオット波動とよばれる波理論が使用できるということです。この理論の現代における発展は、いくつか独立した理論を展開することになっています。多くのプロジェクトの中では、フラクタル波理論が最たるものです。この理論は波回帰法全体の中で、作業仮説として選択されました。


1.5. 全コンポーネントの適用

解決策を完全なものにするために、数学的手法の実行プロジェクトを行います。この数学的手法は、相場の値で構成される数系列のフラクタル波構造を定義、説明するものです。金融商品の値振幅の構造と予測を分析する手法と共に使用します。

つまり、別の基準点を必要とせず、全体のフラクタル構造を必要とするのです。トレンド/補正基準のもと、回帰多項式のパラメーターと、問題のフラクタルの状態を特定します。

さらに、構造の描画には、フィボナッチ・リトレースメントやアンドリュー・ピッチフォークと言った直線ツールを使用してチャート上に描きます。


図5. フラクタル構造分析のためのツール(フィボナッチ・リトレースメントやアンドリュー・ピッチフォーク)


1.6. フラクタル波マトリックス

現代のフラクタル波理論の発展は、物理的、経済的両方の異なる現象についての実証・研究に多くを依っています。

その研究成果は、数学的データに関した形に変形しました。準備データは実市場に適応するものとみなし、的確に分類されました。発見した安定しているフラクタル・グループにおいて、統一行列は、回帰多項式計算のための初期データとして使用するために作成されました。

フラクタルは、スケールは様々で、これらスケールのいずれかで繰り返される安定した構造を表すことが知られています。実際には、これは、同じタイプのフラクタルは、月足での形とティックチャート上の形とがかなり類似していることを意味しています。しかし、実際の市場の状況では、フラクタルの内部構造は破壊や歪みにさらされています。タイムフレームが短いほど、その割合は大きくなります。

フラクタル構造は、外部形状において互いに類似しているものと、そうでないものとから構成されています。通常、市場ノイズと呼ばれるカオスな値動きは、より短いタイムフレームほどたくさん現れます。市場ノイズレベルが一定の限度を超えると、フラクタル構造は壊れます。

フラクタルの形は歪められ、安定したフラクタルのパターンから外れてしまいます。より長いタイムフレームにおける市場ノイズレベルの限界は高く、フラクタル構造は、はるかに安定します。

このことは、手法分析に対する理解、留意を要求する重要な途中の結論を導き出せます。 短いタイムフレームで、フラクタル構造が崩壊しても、価格はまだ以前のフラクタル・フォーメーション内で動いている、という事実です。この結論は、どんなタイムフレームのトレードにおいても重要なことです。これを知っていれば、市場動向に上手く合わせるあなたの潜在能力を引き出させてくれます。


1.7. 市場のキャッシュフローのコンセプト

実際のトレードでは、市場における安定したフラクタルの出現を願って、低レベルの前提条件を考慮しても意味がありません。それらは無意味であり、仕事の質と利益の大きさにはまったく影響しません。

トップ・ユーザーレベルいおいては、それは、近い将来値動きに影響を及ぼし、現在の状況でトレーダーを導く、重要な原始フラクタルを考慮、特定するのに好都合なのです。

このことは、後で例示しますが、フラクタルは、まず第一に、すべてのトレーダーにとって、その知識や背景に関係なく、分かり易く、自然で、慣習的な方法で表示されるべきです。河と、その支流、水源とその自然環境に例えることができます。

すべてのタイムフレームにおける形成しつつあるフラクタル構造は、ある一定期間とどまる均衡したキャッシュフローを形成します。2つのパイプがあるプールを想像してみてください。注水口と排水口です。排水口から水が排出され続けても、注水口から水が補充され続けます。明らかに、流入する水量は、プール内の安定した水位を確保するために、流出量に等しくなければなりません。

マーケット・フローにも同じことが言えます。流入・流出するマネー・ストックが、そのタイムフレームにおけるバーの長さを大きく変化させるのです。ニュートンの第一法則(慣性の法則)もまた、ここで適用できるでしょう。トレーダーは何度もこれを観察しているはずです。薄商い市場で、マネーストックの総額が大きくない場合には、価格はプレーヤーが市場に投資したほんの少しの金額で簡単に変動してしまうのです。

このようなことを起こすマネーフローはたくさんありますが、その1つ1つを個別に考慮する必要はありません。経験と常識から、フローを分解するとそれぞれのタイムフレームで3つに分けることができます。

その1つはメインフローで、どのタイムフレームでも流れる河のことです。ほか2つは、河の支流、または内部フロー、追加流入・流出パイプなど、様々に例えることができます。波回帰チャネルは、湾曲した河岸部分や支流への分岐部分、パイプケーシング等々と解釈できます。

全体のコンセプトは、グローバルな、または主要なフローの存在を正確に把握することです。金融商品の研究となる本流を把握するのです。このようなフローは、マーケットの全マネーストックを基に形成され、特定の金融商品に関連してい変動します。フローには明らかに慣性があり、全ての値動きと様々なフラクタル構造の発生は、本流の湾曲したところでおこります。

このように、キャッシュフローのコンセプトは、かなり価格変動の不確実性を排除し、波回帰チャネルと一緒に、分析・予測手段と同じように市場の位相数学における新たなベンチマークをトレーダーに提供してくれるのです。


2. 市場の原動力となる基本フラクタル

2.1. 原始フラクタル

原始フラクタルは、トレンドやパターン補正の材料となります。これは3つの連続したチャートの極値によって形成され、最小の(原始的)安定的繰り返し構造として定義することができます。

原始フラクタルは、すべてのタイムフレームに浸透し、波マトリックスにおけるフラクタル構造を形成します。原始フラクタルはとてもシンプルなものなので、4つの原始フラクタルの定義の仕方も簡単なものです。

全4つの原始フラクタルを、同じフローで見ていきましょう。3点(А-В-С)は上昇トレンドを形成しています。このフラクタルは3つの重要な特性を持っています。

  1. 極値点Bは極値点Aよい大きい。
  2. 極値点Bは極値点Cより大きい。
  3. 極値点Cは極値点Aより大きい。


図6上昇トレンドパターン

1分足から月足まで、全タイムフレームにおけるこのような基本構造の出現は、原始フラクタルが形成された同じフローにおける上昇トレンドを明確に示すものです。しかし、変動価格がB点より大きくなり、形成された原始フラクタル境界を越えない限り、上昇トレンドだと確認することはできません。ここでは、上昇トレンドだと判明したものとして進めます。

ルール:判明した上昇トレンドの後には、同じフローにおいて元に戻ろうとする下降トレンドが続きます。

ルールはこれだけです。フローにおいて上昇トレンドが形成、確認されたならば、例外なく同じフローにおいて元に戻ろうとする下降トレンドが続くのです。

これは、確認されたどんな上昇トレンドも、次のパターン、下降トレンドが続く原始フラクタル構造を形成するということを示しています。このフラクタルもまた、3つの特性を持っています。

  1. 極値点Bは極値点Aよい小さい。
  2. 極値点Bは極値点Cより小さい。
  3. 極値点Cは極値点Aより大きい。

確認されたトレンドの次は、必ず逆に修正するトレンドが続くことに留意してください。もちろん他の現象もあり、確認されたトレンドの直後に起こるわけではありませ。

にも関わらず、あらゆるタイムフレームにおいて、このような元となるフラクタル構造が出現することは、原始フラクタルが形成された同じフローで、下降トレンドが続く明確なサインになります。以下がこのケースの図です。


図7下降トレンド修正

以下3つの極値点は、上昇トレンドが続くパターンを形成します。見て分かる通り、この場合のトレンド修正は、トレンドではなく修正に続きます。前に述べた2つの原始フラクタルと同じように、このフラクタルも3つの特性を持っています。

  1. 極値点Bは極値点Aよい大きい。
  2. 極値点Bは極値点Cより大きい。
  3. 極値点Cは極値点Aより小さい。

全タイムフレームにおけるこのような基本構造の出現は、原始フラクタルが形成された同じフローにおける上昇トレンドが続くことを明確に示すものです。以下がこのケースの図です。


図8下降トレンド修正

上昇トレンド修正が4つのフラクタルタイプを持つことは簡単に分かります。上昇トレンドに先行する前に述べたフラクタルを反映する下降トレンドパターンのことです。4つの原始フラクタルの3つの重要な特性は以下のとおりです。

  1. 極値点Bは極値点Aよい小さい。
  2. 極値点Bは極値点Cより小さい。
  3. 極値点Cは極値点Aより小さい。

1分足から月足まで、全タイムフレームにおけるこのような基本構造の出現は、原始フラクタルが形成された同じフローにおける下降トレンドを明確に示すものです。

上昇トレンドパターンと同様に、逆のことが言えます。変動価格がB点より小さくなり、形成された原始フラクタル境界を越えない限り、下降トレンドだと確認することはできません。同じようなルールがあります。

ルール:判明した下降トレンドの後には、同じフローにおいて元に戻ろうとする上昇トレンドが続きます。

ルールはこれだけです。フローにおいて下降トレンドが形成、確認されたならば、例外なく同じフローにおいて元に戻ろうとする上昇トレンドが続くのです。

これは、確認されたどんな下降トレンドも、次のパターン、上昇トレンドが続く原始フラクタル構造を形成するということを示しています。下降トレンドがしばらく続いていても、遅かれ早かれ上昇トレンド修正が続くでしょう。

上方トレンド修正が続くパターンの説明はすでに終わりました。

元となる4つのフラクタルを以下に示します。


図9下降トレンド

これまでをまとめます。近い将来のすべてのタイムフレーム上の値動きは、既存の4つの原始フラクタルの1つに当てはまります。同じ4つの元となるパターンは、波マトリックスにおけるフラクタル構造を形成します。

トレンドには常に反対のトレンドが続きます。トレンド修正には、トレンドまたは別のトレンド修正が続きます。先行するトレンド修正とは反対の値動きがおこる、ということです。


2.2. 市場の推進力

次から次へと、市場に出入りするマネーフローは、フローの均衡を歪めます。流入する水は”北極”へ向けて川の流れを作ります。価格軸の上方向です。流出する水は、”南極”へ向けて作ります。価格軸の下方向です。

”トレンド”や”トレンド修正”のような用語を使わずに言えば、金融商品の値は、常に価格変化の特定の時点における市場の主要推進力である流れ方向に動く、ということです。

ルール:トレンドは市場の主要な推進力である。

その構造と発展レベルによって、トレンドは単一のものであったり、より広がりをみせるものであったり、はたまた切り捨てられるものであったりします。トレンドが値を原始フラクタルから外し、反対のトレンドが生まれるまで続くのに失敗した場合、そのようなトレンドは切り捨てられたトレンドの分類に当てはまります。切り捨てられたトレンドは、続くトレンドパターンを形成する構造と同じく、トレンド修正内に現れます。

エリオット波動の波動パターンも切り下げトレンドのパターンを含みます。このようなパターンは"Truncated5(5波切り捨て)"と呼ばれ、第三の波の極値を越えない、切り下げられた第五の波のことを表しています。

通常、確認されたトレンドは単一のものか、より発展していくものです。急なフローにおけるトレンドは、確認されたトレンドであって、値は100%始めの値を越え、162%かそれ以上まで大きくなります。

波理論におけるこのようなパターン例は、”拡張1”は最初の波、”拡張3”は3番目の波、”拡張5”は5番目の波のことです。単一トレンドの構造は、トレンドとトレンド修正の両方から成りますが、単一のトレンドは通常そのスタートから100%のレベルまでという制限があります。波パターンは”第1波動”や”第2波動”、またはより専門性の高い例”第1対角線”や”第5指数三角関数”などで描かれます。

ルール:トレンド修正は少なくともその構造の中で1回の繰り返しレベルがあるトレンドを持ちます。

トレンド修正は、古風な形態と複合構造を持ちます。波理論は多くの修正パターンを原始フラクタルという言葉で定義しますが、全ての修正の動きを1つの複合体としてグループ化することが合理的とされています。

1つのフラクタル修正の構造は、明らかなトレンド、数の上で優勢であるシリーズで構成されます。1つの複合フラクタル修正の構造は、明らかなトレンド、数の上で優勢であるシリーズで構成されます。にもかかわらず、いずれの場合の修正値動きとも、その構造に深く入り込む推進力としてのトレンドを持っています。この推進力はフラクタル修正フォーメーションを100%リトレースメントの限界を超えて形成します。

簡単な例として、主たるロングフローに現れる、古典的な切り捨てられたトレンドを生み出す原始フラクタルをみてみましょう。形成されたフラクタル(А-В-С) は下降トレンドを示しました。トレンドが発展するコース上における急激な振動がありました。価格が標準フィボナッチリトレースメントを跳ね返させたことで起きたのです。

メインフローの回帰モデルは、61.8%フィボナッチ・エキスパンション・レベルまで値が戻った後に、トレンドの終焉を迎えることを示しました。 終焉はトレンドが確認されない状態で起きました。ポイント”B”はまだ生きたままです。

このような形は、明らかに反転トレンドのパターンを示しています。ポイント”B"と”C”からなる原始フラクタルと、61.8%の反転レベルがあります。こうして、切り下げたトレンドはベース、ロングフロー内の上昇トレンドへ続くプラットフォームを形成したのでした。


図10上昇トレンドベース

ロングフローにおける上昇トレンドは、拡張トレンドの形で実現しました。この構造は2つのショートフローにおける連続したトレンドからなっています。この2つの流れのために、河は徐々にその水量を増やしていったのです。

値が61.8%フィボナッチ・エキスパンション・レベルまで戻った時に、この2つの支流は、2つの原始フラクタルから成る”切り下げトレント‐切り上げトレンド”という完全に形成した実際のモデルを生み出した流れとなったのです。

同時に、この切り上げトレンドは、ロングフラクタル構造の修正値動きの、初期段階の発展のための主な推進力になりました。このロングフラクタル構造には、2006-2008間の大きなトレンドのベースとなる新たな原始フラクタルのフォーメーションが完成する2番目の修正段階が続きました。ユーロ/ドル相場の詳細な分析は、Stairway to Heaven LLCの公式サイトにあるソフトウェアを使用して行われました。


おわりに

科学的プロジェクトの実行において、メタトレーダー4の場で再度実証しました。フラクタル波マトリックスの一般的なアイデアと、非線形波回帰チャネルにおけるマーケットフローの新概念を提示しました。

本稿の内容は、テクニカル分析の予測範囲や特性への開発者の注意を引かせることを意図しています。この分野の研究の可能性は、捨てることなどできないからです。Stairway to Heaven LLC とメタトレーダー4の開発者へ多大なる感謝を。